各地でひっそりと話題沸騰中、心を揺さぶられるオムニバス「空が灰色だから」。一巻は赤色、二巻は黄色ときて、三巻の表紙は青色。三冊並べてみると信号みたいだけど、中身は三冊とも一貫して黄色信号。読んでいると心が不安になる感じが似てるような、似てないような。
今回は全体的に暗い話が多めな印象を受けた。というか、「異常な人」を主軸にした物語が多くなった結果、こういう方向性になってしまったという感じ。
例えば、「歩く道」の主人公なんかは、学校にまじめに通う生徒をバカにし、他人に対する理由のない優越感をアイデンティティーとしている。彼の台詞に「だいたい学校なんて自分を持ってない抜け殻みたいな輩が答えを求めて通うところだ」なんてのがあるんだけど、作中ではそのアイデンティティーの象徴である壁を上り、その先の風景を目の当たりにすることで、自身のアイデンティティーが空っぽだったことに気づく。つまり、まさに彼自身がまさに「自分を持ってない抜け殻みたいな輩」だったわけなんだけど、そこにはある種の笑えない滑稽さがあって、かなりドキッとしてしまう。
この作品はこういう「異常」と「普通」の距離感を非常に大切にしていて、その間から生じたなんとも形容し難いズレこそが、この面白さのキモなんだと思う。そして、特にこの巻にはそれを感じさせる物語が多いように感じた(というかほとんどなんだけど)。
とまあ、「空が灰色だから」の三巻というよりも、この作品の総評みたいな書き方になってしまったけど、今回の感想はこんな感じで終わり。四巻も楽しみに待ってます。
……にしても、毎回、収録されている最後の話がわかりやすいほど狂気じみてるんだけど、これって意図してやってるんだろうか。うーん、謎だ。
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