世界は穏やかに滅びつつあった。「喪失症」が蔓延し、次々と人間がいなくなっていったのだ。人々は名前を失い、色彩を失い、やがて存在自体を喪失してい く…。そんな世界を一台のスーパーカブが走っていた。乗っているのは少年と少女。他の人たちと同様に「喪失症」に罹った彼らは、学校も家も捨てて旅に出 た。目指すのは、世界の果て。辿り着くのかわからない。でも旅をやめようとは思わない。いつか互いが消えてしまう日が来たとしても、後悔したくないから。 記録と記憶を失った世界で、一冊の日記帳とともに旅する少年と少女の物語。
あらすじにある通り、「喪失症」という人が生きた存在ごと消し去ってしまう病気が蔓延した世界を、カブに乗って旅する少年と少女の物語。ちょくちょく2chとかで話題に出るので買ってみた。
物語として派手な起伏がなくあくまで淡々と進んでいくため、この小説の雰囲気が好きになれるかどうかで評価は変わってくると思う。個人的にこの手の終末系というか、寂寥感のある雰囲気の物語はかなり好きなので楽しんで読むことができた。
作品自体は大まかに三章で構成されており、旅人の主人公コンビがその土地で出会った人々と交流するという形式は同レーベルの「キノの旅」を彷彿とさせるけど、「キノの旅」と違ってこちらはみんな前向きというか、全体的にいい人しかいない。そもそもほぼ初対面(?)な高校生の男女が旅をするなんて設定なのだから、その辺りに突っ込みをいれるのは野暮なのかも。
Wikipediaで調べてみたところ、この小説は続巻予定があるらしいんだけど、一向に出る気配はない(初版が出たのは2008年)。でも、これはこれで結構きれいに終わっている気もするし、次の話はなくてもいいのかなとは思う。二人の旅の結末は読者の皆様のご想像にお任せします、みたいな。
そういうところも含めて、かなりお気に入りな一冊。やっぱりライトノベルって単巻モノがいいよね。
0 件のコメント:
コメントを投稿