2012年9月11日火曜日

秋山瑞人「猫の地球儀 その2 幽の章」





 以下、ネタバレとか入ってます。








 この猫の地球儀2作目を読んで思ったのが、結局この物語は猫でもSFでもなくて、夢の物語だっただんだなってこと。夢を叶えることについてや、それに伴う代償、そもそも夢とはなんなのか。それらについて非常に考えさせられる内容だった。

 ……と書くと妙に小難しく聞こえるけど、単純に「泣ける」物語として見ても結構秀逸なんじゃないかと思ったり。残されたキャラクターが遠くへ行ってしまった人のことを思うというのはべたべたながらも好きで、エピローグはかなりうるっときた。

 楽の死も読んだ直後は「アレは夢の代償について幽が考えるためのきっかけを作る演出の為の一種の装置みたいなもんだろ」と思ってたんだけど、今、楽の死の部分を読み返したら普通に泣きそうになってびっくり。読んでる途中はあんまり思い入れのないキャラクターだったんだけど、今思えば、この物語には楽という存在が必要不可欠だったのかもしれない。

 副題に幽の章とある通り、主要キャラクターである幽に焦点が当たっていて、本編最後あたりの焔の描写が少なかったのがやや残念ではあったものの、それを差し引いてもとっても良い作品。特に後半の僧正の幽に対する叱責は、かなり来るものがあって、作中では一番この場面が印象的だった。

 これが今から十年以上前の作品かあ。ライトノベルって古い作品はほとんど増刷されないイメージがあるから、どうせならこういう古き良き作品こそ再版とは言わないものの、電子書籍化くらいはして欲しいよなあ。

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