初潮を迎えた自分の身体に苛立ちを覚える秋月は、妹の春菜になつくロボット・ヨハネが子犬をかわいがる様子を見て、ちょっとした悪戯を思いつくが…ペット ロボットを介した性と生の目覚めを描いた表題作、タイムトラベルした少女が自我の認識を獲得する「あたしを愛したあたしたち」、セクサロイドが語る波瀾の 生涯「レプリカント色ざんげ」ほか、性愛SF9篇。日本SF大賞ノミネートの、切なく凛々しい傑作短篇集。
少女の性、というかぶっちゃけエロをテーマにしたSF短編集。といっても官能小説ではなく、ハヤカワ文庫から出ているれっきとした一般小説なのです。中には、かなりえぐい性描写があったりするわけだけど、まあそこはそこということで。
性愛と科学というともすれば両立の難しいテーマを扱った作品集なだけに、収録されているどれもがかなり印象的。性の目覚めをせつなく描いた表題作「からくりアンモラル」から始まり、自己愛とタイムトラベルについての「あたしを愛したあたしたち」、異種間の愛を回想形式で描く「いなくなった猫の話」、作中一エログチャな「レプリカント色ざんげ」などなど。こうやって感想を書きつつぺらぺらと読み返してみると、どれもがバラエティに富んでいる。
中でもお気に入りが「繰り返される初夜の物語」と「ナルキッソスの娘」。「繰り返される初夜の物語」は記憶を上書きされるアンドロイドというSFとしてはかなりベタな設定をうまく調理している作品で、最後の四行が酷く悲しくも美しい。「ナルキッソスの娘」は、本書の中で最もコミカルで完成度の高い作品。まるでコントのような最後のオチにはつい笑ってしまった。またこの作品集には珍しく性描写がない作品でもある。
さほどSF要素は濃くないし、ジャンルに拘泥しないのならかなり良い作品だと思う。
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