理に巣喰うは最強の敵――。
京極堂、桜の森に佇(た)つ。
当然、僕の動きも読み込まれているのだろうな――2つの事件は京極堂をしてかく言わしめた。
房総の富豪、織作(おりさく)家創設の女学校に拠(よ)る美貌の堕天使と、血塗られた鑿(のみ)をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らせた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを眩惑し、搦め捕る。中心に陣取るのは誰か?シリーズ第5弾。
「じょうろうぐものことわり」と読みます。このシリーズのタイトルって、基本初見じゃ読めないですよね。
鈍器と称される程に分厚いこのシリーズもついに五冊目に突入したわけですが、今回も例に漏れず登場人物が多く、複数の事件が並行で進んでいくため物語もかなり複雑。一回読んだだけでは理解できない点(あの人って誰?等々)や他の巻に出てきた登場人物との意外な繋がりもあったりして、完璧に理解するためには再読どころか、「姑獲鳥の夏」から読み返すべきなのかもしれない。でも次回作も早く読みたいし……とかなり贅沢な悩み。ああ、お金よりも時間がほしい。
まあ、そんなことを嘆いてもアレなので、作品について語ることにする。今回の京極堂の蘊蓄のテーマは「女性」。9章10章で京極堂は作中で起こった売春やら夜這いをジェンダー問題などと絡めて語っていくんだけど、京極堂の衒学は事件と切り離して読んでもやっぱり面白い。作中では民俗学者の柳田国夫は性風俗についてはあまり研究をしていなかったということが語られていて、そのこと自体は知っていたんだけど、そういった忌避の感情が性差別に繋がっていくという発想は僕自身全く考えても見なかったものだったので、かなり新鮮だった。そして、衝撃の10章で呆然とさせられたところに11章。そして再び冒頭部分へ――と圧倒され続けて、今一上手い感想が浮かばない。先ほど書いたとおり僕自身理解できない部分も多々ありつつも、半ば無理矢理読み進めていたので、上手くかみ砕けているわけではないけど、確かにこれはシリーズの中でも、「魍魎の匣」と同じくらい、もしくはそれ以上の傑作なのは間違いない。
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