スカイウォーカーであると言うだけで宣教部隊に殺される時代。三十六番目のスカイウォーカー朧が残したロボットと彼の人生のすべてが詰まったビンを拾った のは、朧の予言通り、三十七番目のスカイウォーカー幽でその幽は一匹のちっぽけな黒猫だった―。史上最強の斑は過去四年に渡りスパイラルダイバーの頂点に 君臨し続け、斑に挑戦することはすなわち、死であると言われたその斑に勝利したのは二千五百三十三番のスパイラルダイバー焔でその焔は一匹の痩せた白猫 だった―。そんな幽と焔が出会ったとき、物語は始まる…。SFファンタジー。
秋山瑞人といえば、「イリヤの空、UFOの夏」などで有名なSF作品を得意としているライトノベル作家で、最近あまり作品を出していないにも関わらず根強いファンが多いという印象。僕は初めて彼の作品を読んだんだけど、かなり凝った設定とストーリーをライトノベルらしいちょっと軽めの文体とキャラクターを用いつつ表現しているところは、確かに非常に面白い。特にガリレオ・ガリレイの時代を彷彿とさせるような、宗教と科学の対立という構造は秀逸だなと思った。宗教による科学の弾圧は、宗教の利権という点ではなく、科学の与える影響を考慮した上で行っているというのは僕としてはかなり新鮮な観点だった。
本書はライトノベルという形ではあるものの、挿し絵自体は少なく、章と章の間でしか挿入されていない(そのイラストも本編に直接関係のない小ネタのようなものである)ため、ライトノベルが苦手な人でも読むことができる。「夏への扉」に比べるとかなりファンシーではあるけれども、猫とSFが好きな人にはお勧めの一冊でした。