感染者の精神だけでなく肉体をも変貌させる奇病、A(アゴニスト)異常症患者―俗に言う“悪魔憑き”が蔓延る世界。左腕を失った男、石杖所在と、漆黒の義手義足を纏い、天蓋付きのベッドで微睡む迦遼海江の二人が繰り広げる、奇妙な“悪魔祓い”
2巻を積んでいたのをすっかり忘れていたので、せっかくだからということで再読することにした。
奈須きのこが送る、月姫やFate/stay night、空の境界などのシリーズとはまったく異なる世界観の物語。何気に
西尾維新の化物語のオカルトと現実を重ね合わせたような部分が、京極夏彦の百鬼夜行シリーズに似てるなあと思ったけど、これもどこかそれを髣髴とさせる。もしかすると、これが奈須きのこなりの百鬼夜行シリーズに対するアプローチなんだろうか、なんて思ったり。
ちなみにファウストで不定期連載されていたんだけど、一向に新作が発表されることなく、そのままファウストは休刊に。なんでも、魔法使いの夜でのインタビューによると、DDDは魔法使いの夜完結後に書くということで、これ三巻出るのは一体何年後になるんだろう……。
以下、各話の感想。かなりのネタバレありです。
1.J the E.
最初の話は作中で語られる通り、アリカにとって三回目の事件(最初の事件は二巻に収録、その次は冒頭の木崎氏の事件)となる。悪魔憑きという設定自体がかなりダークなため、全体的に退廃的な雰囲気。月姫やFateよりも空の境界に近いと思う。
一話ということで、大まかな登場人物紹介を兼ねた物語になっている。
2.HandS.(R) / 3.HandS.(L)
2話と3話はそのまま続き。RがマキナでLがアリカを指しているのかな。ホモの新島ちゃんのタイプじゃない発言も何気に複線になってたのには笑った。
これは悪魔憑きというか、久織マキナの狂気が怖い。ホロウアタラクシアの冒頭もそうだったけど、なにげに奈須きのこってこういう背筋が寒くなるような話も上手いよなあ。
ちなみにこのシリーズでカイエに並んでキーパーソンっぽい、妹さん初登場回でもある。
4.formal hunt.
妹が起こした事件の顛末と、なぜアリカが妹に嫌われるようになったかを回想の形で描いた物語。現在視点で見ると、マトさんが悪魔憑きを確保するだけの話でもある。
書き下ろしということもあってか、この話だけ短い。
連載のしている雑誌の方向性もあってか、全体的にミステリっぽい。しかしながら、どれも「Aだと思われていた人物はBでした」みたいな叙述トリックばかりなので、なんだまたこのパターンかーという気分になったりするのが気になる。トリック(というか構成)自体はアレだけど、現代ファンタジーというか、伝奇物としてはかなり面白い。
設定に非常に癖がある一方で、文章自体は読みやすいので、個人的には空の境界よりもこっちの方が好きかな。
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