2012年8月19日日曜日

中井英夫「虚無への供物」




黒ビロードのカーテンは、ゆるやかに波をうって、少しずつ左右へ開きはじめた。―十二月十日に開幕する中井文学。現実と非現実、虚実の間に人間存在の悲劇 を紡ぎ出し、翔び立つ凶鳥の黒い影と共に壁画は残された。塔晶夫の捧げた“失われた美酒”、唯一無二の探偵小説『虚無への供物』を―その人々に。


 以下、ネタバレ注意。














 「ドグラ・マグラ」、「黒死館殺人事件」と三代奇書のうちの一つ。まだ「黒死館殺人事件」の方は未読なので、そっちと比較することはできないんだけど、「ドグラ・マグラ」よりはだいぶ読みやすい作品だった。といっても、やっぱり内容は結構難しいし、ページ数も多く、かなり四苦八苦しながら読んだ印象。
 五十年近くも前に「読者が犯人」という要素に挑戦したというだけでも、十分に「奇書」と賞されるだけのことはあるなあ。ただ、この作品を読むためには、ある程度ミステリーファンとしての教養があることが前提となっていて、その条件を僕自身が満たしていなかったのが残念だった。うーん、もうちょっと、古い作品も読んでみるべきだよなあ。

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