人気作家チヨダ・コーキの小説で人が死んだ―あの事件から十年。アパート「スロウハイツ」ではオーナーである脚本家の赤羽環とコーキ、そして友人たちが共同生活を送っていた。夢を語り、物語を作る。好きなことに没頭し、刺激し合っていた6人。空室だった201号室に、新たな住人がやってくるまでは。
脚本家や小説家、画家といったクリエイターとその卵達の共同生活を描いた辻村深月先生の青春小説――になるのかな。
正直、デビュー作の「冷たい校舎の時は止まる」が微妙だったので、それ以降は手を出してなかったんだけど、だいぶ前に読んだ小説すばるの短編が良かったのをふと思い出して購入。そしてあまりの面白さに一気読み。そして一気読みなので、感想が滅茶苦茶になっているのはご愛敬ということで。
とにかくこの作品には、作者の創作に対する愛が込められていると感じた。ものを創造するってのは楽しいことが全てじゃなくて、自身の才能に悩んだり、生み出したものに責任が生じ思わぬ事態を招いたり、また創作行為と他のものを天秤に掛けたりすることだってあったりする。それでも世の中の作家や芸術家がものを創り続けるのはどうしてなんだろう。そんな疑問についての辻村深月先生流の答えがここにある気がする。
物語の中盤までは、話が派手に動くこともなく起伏に欠けていたけど、その分、後半に入ると物語は一気に加速。住民同士の激しい衝突や伏線回収にもう手が止まらなくなる。特に最終章の逐一伏線を回収つつ紡がれる物語には、思わずうるっときちゃいました。元々ミステリー畑ということもあり、なんてことない登場人物の会話から、読んでいて明らかに狙っていると解る部分まで、まるでパズルのように伏線を物語にはめ込んでいくのは流石。多少ご都合主義であったとしても、ここまでされるともう凄いとしか言いようがない。
それにしても、どうやったらこんなきれいな物語が書けるんだろう。人を感動させることが出来るんだろう。まったくもって不思議です。
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