人間関係も勉強もそつなくこなし、万事如才ない高校生となった飯嶋直幸。県下でもトップレベルの進学校に入学した彼は、なに不自由ない学園生活を手にした。伝統と自粛のバランス―そんな口当たりのいい雰囲気に突然水を差したのは、クラス代表となった小早川千尋。代表に立候補し、履行の邪魔なので副代表は不要と言いはなった眼鏡女子だ。常にテンション高め、ガチガチの規律でクラスを混乱に陥れる彼女のその手に、直幸は炎の剣を幻視する。そして彼女の心の闇を知るのだが―。田中ロミオ最新作は、ヒロイン観察系ラブコメ。
本作はみみみ先輩を彷彿とさせる眼鏡っ娘が表紙になってます。
テーマは「空気」。
学校などの閉鎖的な空間で生まれる、なあなあでありつつも同調を強制する集団意識。そういった「空気」を読まずに、ただただ正論をぶつけるヒロインとそのクラスメイトの軋轢を描いたのが本作「灼熱の小早川さん」になります。ありがちな学園ラブコメに落ち着かず、いつものロミオ節炸裂なので、そういったのが苦手な方も安心。
読みやすい軽快な文体でありながら、登場人物の多面的な部分やスクールカーストの描写は流石の一言。読んでいると、高校生や中学生の頃に自分も体験したことのある、あのなんともいえない感覚が蘇ってきた。
中二病をテーマにした「AURA」を読んだときにも思ったけど、エロゲーやライトノベルといった形で、こういう身近にあってもおかしくない問題を生々しくを書いている人って少ないんじゃないだろうか。
しかしながら、僕としてはAURAの方がおもしろかったなと感じる。というのも、最後の方になるとダイジェストっぽくなるというか、描写や会話を端折りすぎていて、置いてけぼりになったのが原因。クライマックスのヒロインの変化が唐突すぎて不自然。その辺りをもっと子細かつ丁寧に書いて欲しかった。そして後書きがないのも悲しい。
といっても、所々に挟まれるギャグも秀逸で、これまでの田中ロミオ先生を楽しめた方なら、間違いなく楽しめると思います。また、ちょっと歪んだラブコメを読んでみたい方も「ARUA」とともにどうでしょうか?
0 件のコメント:
コメントを投稿