2012年7月29日日曜日

大槻ケンヂ「ステーシーズ―少女再殺全談」




近未来、いかなる存在の意志によるものか?15歳から17歳までの少女たちが突然、世界中で狂死を始めた。少女の屍は立ち上がり、人肉を求めてさすらう無数の大群と化す。屍少女“ステーシー”殱滅のために完全武装の再殺部隊が組織されるが、戦いは血まみれ、泥沼の様相を呈し、涙は枯れ、心は凍りついていく…。大槻ケンヂの音楽も含めた全作品の中でも、最も狂気性に満ちた名作に、外伝2編を加えた完全決定版。

 ゾンビものなんだけど、内容自体はホラーっぽくはない。むしろステーシーとして蘇った死体を再び殺さなければならない側の心理描写に重きを置いている。グロテスクでエロティックな描写が多い一方で、ステーシー化した少女を殺すことを通して、「愛」を描くというのは流石だなと思います。中原中也の「愛する人が死んだときは、自殺しなけりゃなりません」という引用が響く。
 ただ、後半があまりに滑稽無糖になり過ぎてついていけなかった部分もあり、個人的には「新興宗教オモイデ教」の方が好きかな。とにかく序章の出来が素晴らしいので、そこだけでも十分読むに値する作品だと思います。

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